深川八まん山ひらき ーふかがわはちまんやまひらきー

歌川広重名所江戸百景より

深川八まん山ひらき

水彩にて 模写絵師つねきち


深川八まんとは、現在の富岡八幡宮のこと。

山ひらきとは、庭園開放のこと。

当時このような立派な庭園は

滅多に一般開放されませんでしたが、

ここでは空海の命日とともに行われ

風流を楽しむ庶民が訪れていました。

また、江戸時代には神仏の区別がなかった為

深川八まんは永代寺の中に置かれていたそうです。

この頃は宮司が住職も兼ねたりしていました。


絵の上部に並んでいる木は

赤いツツジ。

その横には桜が描かれています。

これらが同時期に咲く事はありえません。

異時同図法といって

時間的にずれて存在するものを

あえて一緒に描く

日本画の手法だそうです。

こんな美しいツツジが、あれだけ咲いていたら

どんなに幻想的でしょう。

赤いツツジの花言葉は「恋の喜び」。

対する桜の花言葉は「精神美」だそう。

それぞれの季節

まさに競艶と呼べたことでしょう。

そして奥の方に見える小さな山が

富士塚。

江戸時代に流行した富士山信仰を

ここからも垣間見る事ができます。

※富士塚とは、本当の富士山に行きたくても

体が動かないとか、遠くて難しい人たちが

気持ちだけでも富士山に近づけるよう作られた、人工的な山です。

この富士塚は昭和40年頃まであったそうです。


永代寺は1855年に起きた安政の大地震で

大被害をこうむりましたが、

まもなく復興し

その後の台風被害からも立ち直り

踏ん張り続けましたが

明治時代に入り

神仏分離令ができ、廃寺となりました。

現在の永代寺は旧永代寺の塔頭・吉祥院が

その名を継いだものだそうです。


異時同図法によって

艶やか(あでやか)に蘇った庭園には

情熱と理性の花が同居をし

物言わぬ自然界からの

確かな息吹を感じる事ができます。


こんな風に自然をデコレーションできる

空間のなんと贅沢なことでしょう。

現代の私たちも

和の美を大切に

守り続けていかなくては

と感じるのです。

模写絵師つね吉八卦鏡

知的障害を乗り越え描く、無垢な魂の筆使い。 つね吉が描く色合いは、渋みが主流の浮世絵とはちょっと違っています。 彼の目には江戸時代の景色がそのまま映っているからです。 そんな独特の「つね吉流儀」をお楽しみください。

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