駒形堂吾妻橋 ーこまがたどうあずまばしー
歌川広重名所江戸百景より
駒形堂吾妻橋
水彩にて 模写絵師つねきち
浅草寺の観音さまが隅田川にご示現された時
最初に祀られた場所に
駒形堂が建てられました。
示現(じげん)とは仏や菩薩がその姿を変え
人々の救済の為にこの世に現れることです。
吾妻橋は隅田川に架かる五つの橋のうちの一つ。
江戸の東側にあるから、あずま橋になったとか
吾嬬神社に繋がるからなど
その名前には諸説があります。
絵の印象を華やかにしている赤い幟(のぼり)は
「紅あります」という意味で
江戸時代の化粧品店「紅屋百助」の
宣伝用に使われていました。
当時、京都から卸された紅は良質で
ベニバナに含まれる1%の色素から作られたもの。
これらは向こう岸にある
吉原の遊女への
贈り物にも使われたそうです。
つまりは
口紅のCM対象には
女性だけでなく男性も多くいたわけです。
幟の右下には角材が並んでいて
この辺りに材木問屋があった事を教えています。
左中央に見えるのが吾妻橋
その右方には集落が並んでいます。
空を飛んでいるのは
初夏を表すホトトギス。
ホトトギスはハトより少し小さめで
国内には5月中旬頃に来る渡り鳥です。
昔、中国の蜀という国で帝王となった人が
このホトトギスに化身をし
農耕の時期が来ると、それを告げる為に鳴くとか
蜀が秦国によって滅ぼされると
それを悲しみ、血を吐くまで鳴いたので
ホトトギスの口の中は赤い
などと言われています。
「あの声で蜥蜴喰らうかほととぎす」
人や物事は見かけによらない、という意味の句があります。
生き物が生き抜くことの
生々しさ、そして鮮やかさが
梅雨どきの鈍色の空に
浮かび上がってくるような一枚となりました。
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