遠江山中 ーとおとうみさんちゅうー

遠江国は静岡県西部のあたり。

木挽き職人が巨大な材木を 試し切りしている構図です。

木の上にいる離れ業の職人は 前挽きという縦にひく”のこ”を使っています。

大きく反り返り下から切る職人。 こうして上下から切ったり 材木を斜めに立てるのは 実際にはあり得ないそうですが 北斎の発想には度肝を抜かれます。 

 職人の後ろにいるのは 膝を抱え富士を見つめる子供。 

”おおのこ”の見立てをする職人に 弁当を届ける女性。 背に赤子を背負っています。

 当時はよく見られる光景だった事でしょう。

立ち上る焚き火の煙を つねきちが塗りぼかしで描いています。 

後ろに見える丘も味が染みた状態となっています。

水墨画の影響を受けたスタイル雲が 今日もぐるぐる渦巻きながら 龍の形で昇っていきます。 三角の頭を覗かせる富士の前に 同じ三角に組まれた足場は 神を演出する鳥居の役割を果たしています。

もちろん材木の立て方が 三角に見えるのも計算済みです。 

 あらゆる細部にまでこだわった興味の尽きない作品に、 無垢な器のつねきちが 拍動を加えました。 箱根の静寂とは対照的に 躍動を感じさせる世界からは 煙が流れる音さえ聞こえてきそうです。 

実際にはあり得ない技だとしても 当時の人々の生きる術は いまの私たちから見れば、やはり離れ技・神業のように思えます。 

 地道にやり抜く。 そして、時に大胆なる挑戦。 人生意気に感ず、のとき。 そんな風に華を添えていくことも 自分らしく生き抜く業(わざ) なのかもしれませんね。


模写絵師つねきち八卦鏡

知的障害を乗り越え描く、無垢な魂の筆使い。 つねきちが描く色合いは、渋みが主流の浮世絵とはちょっと違っています。 彼の目には江戸時代の景色がそのまま映っているからです。 そんな独特の「つねきち流儀」をお楽しみください。

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