請地秋葉の境内 ーうけちあきばのけいだいー

歌川広重名所江戸百景より

請地秋葉の境内

うけちあきばのけいだい

水彩にて 模写絵師つねきち


現在の東京都墨田区向島には、

請地村(うけちむら)という所があり

そこに「千代世」という美しい森がありました。

請地とは鎌倉・平安時代から

幕府によって管理されていた土地のことですが、

ここには、水の中に浮いている土地

=浮き地

という意味があるとも言われています。

ここで善財という僧侶が庵を結び

秋葉大神の像を掘り、納めました。

秋葉大神は神仏習合の火伏せの神で、

火を背負い

白虎にのった天狗の姿をしています。

火事の多かった江戸において

この信仰は多くの人に伝えられ

大名をはじめ、江戸城・大奥にいる人々、

庶民にまで至り

この地に集まってきたそうです。

すっかり江戸の名所となった土地には

立派な社殿が建てられ

秋葉稲荷両社と呼ばれるようになり、

境内には万願寺が置かれました。

まるで炎を閉じ込めたように

たわわに色づく紅葉たち。

水に映る影からも

その息遣いが伝わります。

絵の左下、屋根の元で写生をする人が見えていて

剃髪後の広重自身だという説もあります。


秋葉稲荷両社は明治時代の

「神仏分離令」により

「秋葉神社」と呼ばれるようになりました。

秋葉神社は現在も

日本全国に点在していますが

そのうちの一つは

東京都台東区にあった火除けの原っぱに置かれ

秋葉の原・秋葉っ原の呼び名がありましたが、

鉄道が敷かれるのと同時に

駅名と同じ「秋葉原」が

そのまま地名となったそうです。


つねきちが水彩絵の具で塗り込めた

強烈に赤い色。

それは火伏せの神様からの

伝言だったのかもしれません。


火よりも赤く

強い思いで

命を、こころを守り

生き抜いていく。

その情熱を

忘れずにいられるように。

模写絵師つね吉八卦鏡

知的障害を乗り越え描く、無垢な魂の筆使い。 つね吉が描く色合いは、渋みが主流の浮世絵とはちょっと違っています。 彼の目には江戸時代の景色がそのまま映っているからです。 そんな独特の「つね吉流儀」をお楽しみください。

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