真間の紅葉手古那の社継はし ーままのもみじ てこなのやしろ つぎはしー

歌川広重名所江戸百景より・秋の部

真間の紅葉手古那の社継はし

ままのもみじ てこなのやしろ つぎはし

水彩にて 模写絵師つねきち



現在の千葉県市川市にある

真間山弘法寺(ぐほうじ)の境内に

秋を彩る

艶やかな楓の木がありました。

その木と木の間に継ぎ橋が、

左下の方に、灰色の社が見えています。

ここには、江戸の人々に語り継がれる

手古奈(手古那)という女性の伝説がありました。

手古奈は飛鳥時代の官僚の娘で

万葉集にも謳われるほど

美しい女性でした。

真間(まま)から近隣の国に嫁ぎましたが

その美しさ故に逆恨みをされたり

何かと苦労が多く

再びこの真間に戻ってきました。

けれど、出戻りの身を恥じ

子供と共に静かに暮らしていたそうです。


ところが、たとえ粗末な身なりをしていても

手古奈の美しさは男たちの目にとまり

彼女をめぐった男同士の争いが

繰り返されました。

その状態に困り果てた手古奈は

この場所で入水し

自らの命を絶ってしまったそうです。


手古奈を憐れに思った人々は

社を建てて彼女を供養しました。

交差した紅葉たちが

手古奈の静かな眠りを守るように

やさしく目隠しをしています。

彼女の伝説は

「真間の手古奈」というオペラの

題材にもなっているそうです。

哀しいお話が秘められたこの土地を

つねきちは自然にまかせた

のびやかな線で描き

生き抜く力が滲み出るのを感じさせます。


美は人の心をいやすもの。

皆それを手に入れたいと願います。

けれど、いざ手にしてみると

維持すること、守り抜くことの難しさを

感じるのかもしれません。


流れにまかせ、季節に従い

少し、ひいて見る。

そんな生き方を

楓たちが教えてくれているようです。

模写絵師つね吉八卦鏡

知的障害を乗り越え描く、無垢な魂の筆使い。 つね吉が描く色合いは、渋みが主流の浮世絵とはちょっと違っています。 彼の目には江戸時代の景色がそのまま映っているからです。 そんな独特の「つね吉流儀」をお楽しみください。

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