みつまたわかれの淵


歌川広重名所江戸百景より

みつまたわかれの淵

水彩にて 模写絵師つねきち


現在の中央区日本橋中洲付近にあたる場所には

隅田川、小名木川、箱崎川が

合流する地点があり

”みつまた”と呼ばれていました。

そして、そこは淡水と海水の分かれ目でもあったので

”わかれの淵”という名がつきました。


絵の左側に見えるのは富士山。

その下側に並ぶお屋敷は

将軍の後継としての資格を持つ

徳川御三卿のうちのひとつ

田安家のもの。

そして、右側の赤門屋敷には

ときの老中・堀田備中守と大名・安藤長門守がいた

といわれています。

芦の生えている中洲は、かつて茶屋や湯屋が立ち並ぶ

埋立地として栄えた場所でしたが

洪水が多いのと寛政の改革の影響で

取り壊され、元の姿に戻りました。

その後は、米俵・酒樽・木綿などの輸送船や

月見の名所としても

賑わっていたようです。


白く柔らかなカーブを描く富士の姿と

船の帆がオーバーラップし

自然な安定感を得られる構図です。

細筆一本で描かれた輪郭線が

迷いを感じさせない

つねきちの真っ直ぐな心を表しています。


なめらかで、やさしく

そして、しっかりと

次に進むべき道を示してくれる

そんな風情を

感じさせてくれる作品です。

模写絵師つね吉八卦鏡

知的障害を乗り越え描く、無垢な魂の筆使い。 つね吉が描く色合いは、渋みが主流の浮世絵とはちょっと違っています。 彼の目は時空を超えて当時の景色をそのまま映しているのです。 そんな独特の「つね吉流儀」をお楽しみください。

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