南品川鮫洲海岸 ーみなみしながわさめずかいがんー

歌川広重名所江戸百景・冬の部より

南品川鮫洲海岸 

みなみしながわさめずかいがん

水彩にて 模写絵師つねきち


現在の東京都品川区東大井あたりは

かつて海であり

海苔の養殖場がありました。

海苔はそもそも海藻の一種で

胞子により繁殖をするので

この胞子を網につけて育てるのが

海苔の養殖です。

海苔は夏には糸状体(しじょうたい)という形で

牡蠣の殻などについていて

秋になると胞子を出します。

この絵は冬どきですから

それらがちょうど育ってきた頃なのでしょう。

船がたくさん浮かぶ向こうに

見えているのは筑波山。

その前を飛んでいるのが

雁の群れです。

鮫洲という地名は

干潮時に砂の中から清水が出るから

砂水(さみず)→さめず

になったとか

ある時、大きな鮫が打ちあげられて

そのお腹の中から観音像が出てきた

鮫→鮫洲

になったとも言われています。

右の黒っぽい部分を

飛んでいるのは、ゆりかもめの一群。

ここで採れた海苔は

主に浅草で加工されたため

浅草海苔と呼ばれるようになりました。

実際のアサクサノリという品種は

現在、絶滅危惧類に指定されているそうです。

今も食卓に並ぶ

焼き海苔は別ですが

生海苔を消化できるのは日本人だけ

(消化するバクテリアがいるのは日本人の腸内だけ)

という説もあります。

つねきちも海苔は大好物。

この絵が完成した時は

きっとお腹いっぱいな気分に

なれたことでしょう。


模写絵師つねきち八卦鏡

知的障害を乗り越え描く、無垢な魂の筆使い。 つねきちが描く色合いは、渋みが主流の浮世絵とはちょっと違っています。 彼の目には江戸時代の景色がそのまま映っているからです。 そんな独特の「つねきち流儀」をお楽しみください。

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