金杉橋芝浦 ーかねすぎはししばうらー
歌川広重名所江戸百景より
金杉橋芝浦
かねすぎはししばうら
水彩にて 模写絵師つねきち
(2021年12月ごろ仕上がり)
現在の東京都港区にある金杉橋は
江戸時代、東海道の公儀橋として架けられました。
この付近に植えられていた栴檀(センダン)の木は
夜になると金色に光って見え
漁師たちの渡航の助けとなったそうです。
その栴檀が杉の木の姿に似ていた為
橋や地名に
金杉という名がついたと言われています
毎年10月になると
日蓮宗の信者たちが「御会式」の為に
この橋を往来します。
御会式(おえしき)とは
日蓮上人の忌日前夜からなされる
法要のことで
多くの参詣者が訪れていたそうです。
絵の右側、芝浦の海には
江戸前魚の捕獲に務める船が見え、
左の遠景には浜離宮があります。
長い長い竿の先には
ひしゃくと手ぬぐいがつけられています。
お寺の手洗い用に寄進する為の品を
組み合わせた物ですが
白と紺がとても粋なオブジェです。
その少し下には、鮮やかな赤色の旗。
池上本門寺の紋所が入っていて
「一天四海皆帰妙法(いってんしかいかいきみょうほう)」
世界全体に仏様の教えを広め救う
という意味の言葉が書かれています。
その向こうが参拝を終えて江戸に帰る行列
と、言われています。
傘の合間に見えるのは、仏教で使われる団扇太鼓(うちわだいこ)。
おびただしい数の人の思いが
橋の上でひしめく様子が伺えますね。
法要のイメージとはおよそかけ離れたような
賑やかで艶やかな光景です。
つねきちの柔らかな筆の線と
ためらいのない明るい染色が
江戸の庶民にとっての大切な日を
より印象的に演出しているようです。
夜目にも輝く栴檀のように
心を照らす江戸の儀式。
当時の人々の信心と共に進めるような
心強さを感じられる作品です。
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