吾妻橋金龍山遠望 ーあがつまばしきんりゅうざんえんぼうー
歌川広重名所江戸百景より
吾妻橋金龍山遠望
水彩にて 模写絵師つねきち
現在の言問橋(ことといばし)辺りで
桜見物を楽しむ船の向こう側に
富士山と五重塔、金龍山浅草寺が見えています。
かなり細かい描写を
つねきちが水彩筆で丹念に描きました。
浅草寺は今でも観光で賑わう場所で
東京都内最古の寺と言われています。
御本尊は聖観世菩薩
浅草観音や、浅草の観音様と呼ばれ
親しまれています。
このように簾があるのは屋根船といい、
船遊びは富裕層の象徴でした。
(障子があるものは屋形船といい
武士が使うもので、庶民は使っていませんでした)
富士山と桜ふぶき
艶やかな着物姿の女性
その少しだけ見える後ろ姿は
洗練された美しい芸者を連想させ
この贅沢なひとときに
雅な色を差しています。
よく見ると、桜の花びらにも
薄い紅が差してあります。
水に映る船の影さえも
優雅なシーンを演出しているかのようです。
こうして眺めても
浅草の大屋根と五重塔は
江戸の繁栄の象徴のようです。
広重はこの絵を
安政の地震や台風からの復興を
表すものとして描いたそうです。
浅草寺の雷門は
何度も火災により焼失していて
江戸時代だけでも二度立て直されました。
現在ある雷門は鉄筋コンクリート。
戦後に松下電器の松下幸之助が
費用を出して、再建されたものです。
永遠の春を感じさせるような、この構図。
夢の中に出てくるような
顔の見えない女性。
完成されたゆらぎの時間を
気づかないうちに私たちも過ごしているのです。
いまこのひとときは当然のものではない。
そのことを忘れずに
すすんでいきたいと思います。
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