真乳山山谷堀夜景 ーまぢちやまさんやぼりやけいー

歌川広重名所江戸百景より

真乳山山谷堀夜景

水彩にて模写 つねきち


夜桜の花吹雪が舞う中

接客を終えたひとりの芸者が

下男の持つ提灯にひかれ、歩いています。

この、山谷堀(さんやぼり)は

荒川の氾濫を抑える為に作られた水路で

吉原遊郭に渡る為の

交通手段としても使われていました。

よろず吉原 山谷堀

と歌われた風情のある場所です。

原画(版画)では

空と水面に「板目刷り」という模様が入っていて、

白い星の粒が描かれていましたが、

つねきちの水彩筆は空と水面を

ふんわりと塗りあげ

葉桜から多くの花びらを旅立たせ

まるで雪の風景画のように

煌びやかなシーンに仕立て上げました。

正面に見える丘が真土山(待乳山ーまつちやま)

その麓には船宿の夜景が

春の宵に灯火を添えています。

真土山は昔はもっと高さがありましたが、

この場所に日本堤を作る為

削られて小さくなったそうです。

この川を猪牙舟(ちょきぶね)で渡り

遊郭へ向かうのを

山谷通い、といい

最高に贅沢な遊びとされていました。

絵に華を添えるこの芸者は

歌川広重もごひいきにしていたという

実在の人物だそうです。

着物の模様など

つねきちも非常に細かく描きこんでいます。

口紅と襦袢と提灯の赤い色が生え

なんとも美しい、艶のある女性の姿になりました。



吉原は幕府公認の遊郭で

はじめは江戸日本橋近くに建てられましたが、

明暦の大火後

この日本堤付近に移されました。

明治以降は縮小され

現在では山谷堀公園になっています。

江戸の夜景が美しかった日本堤を

趣のある場所にライトアップしたのは

当時の吉原にいた女性たち。

いつの世も

毅然とし、凛々しく働く女性たちは

人々の目を楽しませ、繁栄をもたらします。

令和に生きる私たちも

胸を張って

毎日、自分の務めに打ち込みたいと思います。



模写絵師つねきち八卦鏡

知的障害を乗り越え描く、無垢な魂の筆使い。 つねきちが描く色合いは、渋みが主流の浮世絵とはちょっと違っています。 彼の目には江戸時代の景色がそのまま映っているからです。 そんな独特の「つねきち流儀」をお楽しみください。

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