芝うらの風景 ーしばうらのふうけいー

歌川広重名所江戸百景、冬の部より

芝うらの風景

水彩にて 模写絵師つねきち



現在の東京都中央区にある

浜離宮の辺りから、

品川方面を向いた景色です。

芝うらとは

「芝の前面の海」という

意味があるそうです。

絵の向かって右側にある、段々になった場所には

「御浜御殿」と呼ばれた

将軍の別荘がありました。

戦後、米軍によって破壊されたそうですが

その後復旧され

現在は「浜離宮恩賜庭園」(はまりきゅうおんしていえん)

として、特別史跡に指定されています。

左側に立っているのが航路や潮の干満を示す”澪標”(みおつくし)。

この澪標は、海が浅瀬であることを示しています。

”みおつくし”という言葉は

「身を尽くす」にもかけられ

「わびぬれば 今はたおなじ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ」

(小倉百人一首・元良親王)

という歌にも登場しています。

※歌の意味:あなたとの関係が露呈してしまって、苦しむことに変わりはない。
難波にある澪標のように、この身を滅ぼしてもお逢いしたいと思うのです。

そして絵の中央から前に向かって飛んでいるのが

「都鳥」=ゆりかもめ、といわれています。

ゆりかもめは冬の季語にもなっている渡り鳥で、

絵のように冬場は薄いグレーと白っぽい見た目をしています。

夏になると顔や羽根部分が黒く染まり、

ちょっと雰囲気の変わる鳥です。

つねきちの描いた都鳥たちが

無心な目をして海上を飛んでいる姿が、

何となく微笑ましい感じです。

野生の鳥たちにしては、人(?)の良さそうな顔つきをしています。

今回の絵の主役は、やはり

このゆりかもめさん達なのでしょう。

つねきちの生き物に対する思いが

伝わって来る一枚です。



模写絵師つねきち八卦鏡

知的障害を乗り越え描く、無垢な魂の筆使い。 つねきちが描く色合いは、渋みが主流の浮世絵とはちょっと違っています。 彼の目には江戸時代の景色がそのまま映っているからです。 そんな独特の「つねきち流儀」をお楽しみください。

0コメント

  • 1000 / 1000