高輪うしまち ーたかなわうしまちー
歌川広重名所江戸百景より
高輪うしまち
水彩にて 模写絵師つねきち
(2021年12月頃仕上がり)
現在の東京都港区高輪あたりで
海上に並ぶ船と
その上に架かる虹が
のどかな夏のひとときを、感じさせる作品です。
1600年代、江戸市内に造られた
増上寺や市ヶ谷見附石垣の、資材を運ぶため
京からたくさんの牛車が江戸に入りました。
この際、同じ京から呼ばれた職人たちは
時の工事をきっかけとして
幕府から牛車運搬の特権を与えられたそうです。
その牛車の向こうに見えているのは
立ち並ぶ碇泊中の船と
灰色の御台場です。
御台場は1853年ペリー来航の後に
江戸防衛を考えて造られた砲台のこと。
海上に全部で8つ設置する予定のうち、6基までが完成、
幕府崩壊まで江戸湾警備の拠点とされましたが、
その後、埋め立てや撤去が続き
現在残っているのは2つとなりました。
そのひとつは現在の「都立台場公園」
もうひとつは国の指定史跡として残されています。
誰かが食べた西瓜の皮と
わらじで遊ぶ子犬たち。
弧を描く虹と車輪の形。
つねきちの心をあらわすような
柔らかい筆の線が
ゆったりとした平和な時を感じさせます。
ここは二十六夜待(にじゅうろくやまち)や
中秋の名月(ちゅうしゅうのめいげつ)でも
賑わっていたそうです。
一時は緊迫感に包まれていた、私たちの海。
それぞれの御台場は
結局、砲台として実際に使われる事はなかったそうです。
そして、時代は流れ
この場所はポピュラーな観光地となりました。
浮世絵に眠る
うつくしい海と人のこころを
弾力に溢れた温かいタッチで
じっくりと仕上げた一枚です。
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